今月の朝の食卓は、「野いちごの季節」でした♬
野いちごの季節
6月中旬、里山はニセアカシアの白い花が満開で、辺りは甘い香りに包まれます。畑では麦たちが空に向かって真っすぐに穂を伸ばし、ジャガイモの紫色の花が彩りを添えています。田んぼの稲たちもしっかりと根を張り、ドジョウやおたまじゃくしが元気に泳ぎ回っています。
すっかり深緑になった森を歩いていくと、地面をはうように広がるかわいらしい葉っぱの影に、水滴をまとった小さな赤い実を発見。北海道の野山に自生するノウゴウイチゴです。森の中でこの小さな赤い宝石に出合えるとうれしくなりますね。
葉をかき分けていると湧くように現れるブヨや蚊の大群をかわしつつ、籠いっぱいに小さな実を集めるのは少し大変ですが、畑のいちごにはない爽やかな酸味と芳潤な香りの野いちごは、ジャムにすると絶品です。野生の動物たちも大好物なようで、この時期のクマやキツネのフンにも小さなつぶつぶの種がいっぱい入っています。
伐採や道路工事などで、むき出しになった表土が光を浴びると、この時を待っていたかのように長い間眠っていたノウゴウイチゴの種が一斉に目覚めます。そして周りの草木が大きくなると森の片隅へと消えてゆく。そんな一瞬のはかなさを秘めた野生の野いちごたちもまた、巡りゆく命の輪の中にありました。
今日は畑のライ麦でクレープを焼いて、野いちごジャムを包み、この季節だけの自然の恵みをいただきます。北海道新聞連載コラム「朝の食卓」より