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十川渉(そごう・わたる)
magocoro 代表
1979年4月11日 高知県生まれ AB型
軽井沢の暮らしに必要なオリジナル家具の製作・エクステリア・ガーデンデザイン、お客様の多様性あるニーズに真心を込め、常識に囚われないモノ作りをお届けする家具職人。
古くから軽井沢に伝わる伝統工芸の高級家具屋に13年務め、現在は、自身の拠点となる工房『magocoro(まごころ)』を軽井沢に建て独立。
magocoroへのリクエストは、枝葉のように形を広げ、十川氏の監修指導の元、デザイン〜製作〜完成に向けて本格的な家具作りを一緒に体験できる貴重な場にもなっている。
木材質を見極め有効活用する匠な技、長年の経験に裏打ちされたそのクリエイティビティは、女性や子供、そして建築家・デザイナーにも人気を博し『magocoro』の真心は、軽井沢中に伝わり始めている。
Introductory chapter
リレーインタビュー第3話、リアライズ篠原幹雄さんより渡されたバトンは、「信頼のおける若い家具屋さんの発展を願って」と託され、軽井沢追分にある工房 magocoro の十川渉さんへと繋がります。別荘建築のお話であった前話に対し、今回の十川さんのエピソードは、軽井沢に暮らす方々へ向けた家具作りという、とても身近なお話。願わくば実用的でお洒落に決めたい暮らしの家具。独立したばかりの十川さんに、様々な観点から家具のお話をお伺いしました。
2018年1月19日 ~ 現在、取材中
プロデューサー:堀田健志
十川さんの元へ
——十川さん初めまして。本日はどうぞ宜しくお願いします。
十川:はい。こちらこそよろしくお願いします。
十川:ストーブの近くで、ゆっくりくつろいでくださいね。
—— こころ温まるお気遣いをありがとうございます。素敵な工房に、素敵なストーブですね。
十川:ありがとうございます。
—— まず最初に、TABLENOTE [テーブルノート] で初めて十川さんを知る方のために、十川さんの簡単な自己紹介をお願いします。
十川:はい。十川渉(そごう わたる)と申します。
高知県出身の昭和54年4月11日生まれ、牡羊座、39歳。血液型はAB型です。
—— 現在のご職業を一言で言うと?
十川:家具職人としてお仕事をさせていただいてます。
けど、本当は、職業を断定せずに、デザイン、ガーデンエクステリアなど、木材に携わっていくこと全般をもっと広く活動していきたいと思ってます。
—— まるで木の枝葉のように活動の幅が広がっていくイメージでしょうか?
十川:はい、そうですね。木材の世界は本当に広くて奥深く、木材の活用方法も様々で、仕事も多様に広がっていると思います。
—— 今回、十川さんへリレーバトンをお渡ししたリアライズの篠原さんとは、どのようなご関係だったのでしょうか?
十川:篠原さんは、一緒にお仕事をさせていただいており、元々は「あさまストーブ」に勤めている女性スタッフさんのご紹介で知り合いました。
—— あさまストーブさん、あの信州最大の薪屋さんですか?
十川:はい。というのも、僕自身「自分の工房を建てるにあたって誰か良い建築家の人は居ないですか?」と、周囲に聞いて探していました。
その時に「とても良い建築家の方がいますよ」と、あさまストーブの女性スタッフさんからリアライズ篠原さんの存在を聞き、そして出会った形ですね。
—— 最初の篠原さんの印象は?
十川:優しい印象の人でした(笑)
「ど〜も〜。」「どうしました〜?」みたいな。物腰の低い感じで、柔らかく親しみのある方で。
けど、仕事のことはさすがで、「とりあえず話をしましょう!」と。
これから建てたい工房の話を聞いてくださって、結果とても良い工房を建てることができました。
—— 本当にすてきなmagocoroの工房。芸術が生まれる空間というか。
十川:この工房を建ててくださった時から篠原さんとはご縁が続き、一緒にお仕事をさせていただいてます。
最初の家具作り
—— 『magocoro』として軽井沢で独立される以前、十川さんが最初に家具作りをはじめるきっかけは何だったのでしょうか?
十川:「1つの空間を創る」というようなアートコンセプトで、大阪芸大の学生時代にやったグループ展が最初の家具作りのきっかけでした。
他にも洋服を作ってる人、音楽をやってる人、映像を流している人、写真を撮っていたりする人、色々な人が集まって一つの”空間を創る”というもので、その空間に必要な家具を考えて作ったのです。
—— みんなの手作りで1つの空間を?
十川:そうですね。僕が作ったのは家具で、そこに誰かの手作りの洋服が入れてあったり。
—— その頃から空間を創る・インテリアのようなことに興味が湧いてきた?
十川:はい。その時の展示アートでは、感想アンケートを取っていまして、、、来場された方の中には「これ、家具じゃないよね」と、厳しい意見がありまして。
—— 家具に対するお叱りのご意見?
十川:「この造りではダメでしょう」とかも。
そういうアンケートを見てると、何かこう、、
本当に悔しくって。
—— 本気スイッチが入ったのは、アンケート?
十川:はい、本当に、しっかりとしたモノを作りたくなった。
良い感想も、良くない意見にも、アンケートを手に取って感じて。
人の意見や感想を素直に聞くというのは、今もとても大切なことだと思います。
—— 家具作りの始まりのその瞬間から、人が喜ぶ家具作りの本質的な “ニーズ” を、洞察されていたのですね。
修行時代と無垢材
—— 大阪芸大を卒業した後は?
十川:家具を作るために、専門学校を探し、長野県にある技術専門校・職業訓練校がすぐ候補にあがって、木工科で勉強しようと思いました。
—— 長野県の専門学校を選んだ理由は何かあったのでしょうか?
十川:決定的な理由は、本物の無垢の材料で、はりものじゃない家具作りを学べる数少ない学校だったことです。
今でも無垢の材料で学べる学校は日本を探しても少ないはずですよ。
—— 無垢材で学べる。なるほど本格的ですね。ということは、18歳まで生まれ故郷の高知県、大学4年間は大阪芸大、そして22歳で長野県の専門学校に通ってとのことですが、はじめて軽井沢に訪れたのはいつですか?
十川:初めての軽井沢は確か、専門学校時代に軽井沢に一度訪れて、好きになった感じですね。
—— 無垢材で学べるとは、本格的な印象ですね。
十川:木工科では、家具の作り方、技術的な練習も、耳付きの木の板があって、そこから角材を作るところから始まりますね。
厚みを決めて、四角い角材を作るっていうところから…
1年間でしたが必要な経験を学べました。
—— 木工の世界にも専門資格などはあるのでしょうか?
十川:手加工はあって、1級と2級があります。
—— 木工の専門学校を卒業してからは?
十川:職業訓練校に木材関連の求人情報は沢山くるんです。
たまたまその中に、軽井沢の大坂屋家具店の応募を見つけ、応募して就職できました。
—— 大坂屋家具店に入社したのは何歳の時ですか?
十川:23歳ですね。専門校は1年間で卒業でしたので。
—— そこから大坂屋家具店では、何年間ほど働かれていたのでしょうか?
十川:13年間勤めていました。
—— 何事も真のプロは10年と聞きますが13年! 本当に長くきっと多くの学び、基礎を築かれたのでしょうね。
十川:そう、長期間勤めさせていただきましたね。たくさんの学びがありました。
独立への兆し
—— 修行時代を終えていよいよ独立。『magocoro』を独立させてやってみようと思ったのは、どんな目標や心境の変化があったのでしょうか?
十川:そうですね、家具職人としては、「たくさんの人が使える家具を作りたい」という想いが、こう、強く芽生えてきました。
—— たくさんの人が使えるというのは、比較的日常的に使う家具のことですか?
十川:大坂屋家具店の時は、比較的に富裕層のお客様が中心でした。
決して誰でも手の届くような価格の家具ではなく。
工芸品のような世界で、日常的な商品でもありませんでした。
—— 確かに、販売表示価格の桁を…つい数えて(笑)超高級家具という印象を感じます。
十川:昔の伝統工芸、伝統的なものが多いので。
一番大きいのは、私たち夫婦に、子どもが生まれたこと、それが作品の変化の理由としてあります。
僕の中にはどちらかと言えば、子供が喜ぶような、日常的に使えるモノを作りたい想いが強くなりました。
—— 素晴らしいですね。
十川:僕らは夫婦共働きをしています。
保育園に預けたり迎えに行ったりもしていたので…
工房の中から仕事しながらも子供の様子が見えたり、自分の自宅工房があってそこで作業ができればいいなぁ、とか。
—— お子様が目の届く場所に工房があれば安心ですよね。現在はお子様はおいくつになられましたか?
十川:11歳のお姉ちゃん、下の子が8歳の2年生で男の子です。
あと僕の両親が今は高知県にいるのですが、ゆくゆく軽井沢に移住してきます。
今後は、自宅で両親の老後のケアもみてあげなきゃというのもあります。
—— 軽井沢であればご両親の老後のお世話も安心できますね。
十川:はい。大丈夫そうですね。
そして、家具作りとして影響を受けたのが、現在、北欧家具の扱いで大活躍されている、島崎信さんっていうインテリアデザイナー・デザイン教育者の方がいて、軽井沢にお越しになった時に話す機会がありました。
「冬は冬の仕事やればいいんじゃないの?」っていう考えを聞きました。
ご高齢の80歳ぐらいのおじいさん、その知恵などに「あ、そういう考え方もそういう生き方もあるんじゃん。」って思って。
当時の自分のスタイルと比較して、救われたことがありました。
お客様の声を第一にして、一緒に商品を考えて作ったり、自宅に必要なオリジナル物を作ろうと考えが変わってきました。
—— 自然のサイクルに合わせ、本質的なニーズに応える仕事を目標にされた。
十川:そうそうそう。
冬場は軽井沢って店が結構閉まるんですけど、そしたら冬の良さを利用して商売をすれば良いんじゃないかって。
本当にニーズに合ったものさえ作っていれば、それで良いなって考えに変わりました。
—— 先に商品があるのではなく…
十川:そう。変にこっちが凝って作って「はい、30万の家具が出来ました、買ってください!」じゃなくて、本当にお客さんに必要とされているものを、手の届く価格で、必要に応じて提供できるモノ作りをしてみたい。
必要なものは、一緒に作っていきましょう。という感じでmagocoroの工房が今は機能し始めてます。
こういうことが軽井沢で出来るのは本当に楽しいですし、人に喜んでもらえることが本当に嬉しいと思います。
magocoro工房の活動
—— magocoro工房はお客様が軽井沢地域に多いとのことですが。
十川:そうですね。軽井沢のリアライズさんに、住宅オーダーされたお客様のご紹介や、ご依頼を受けております。
「こういうのを作れる?」というのを聞かれて「じゃあ、やります」という。
リアライズさんには本当に有難いことに、貴重な体験を色々積ませてもらってます。
—— 色々な経験が、色々な発想につながって、色々な作品になっていくのでしょうね。
十川:そうなんですよ!だからまだまだ、軽井沢地域のことでお手伝いできることなら進んでやりたいですね。
—— 商品の幅も広がっていくと、届ける対象の方も広がっていきますよね。
十川:そうですね。自分の工房を使って作って、それをお客様へ納めに行くとか、会社員時代にはしてこなかったので、本当に色々と新鮮です。
異なる素材を1つの作品に
—— 十川さんがこれから新しく挑戦してみたい分野はありますか?
十川:まるで違った素材を合わせて使うものには惹かれて挑戦したいと思ってます。
例えば、簡単に想像できるのは天板が木で、下が鉄の足とか。
ガーデニングテーブルを外に出しっ放しの方とか、足元が木製だと土に触れて腐ってくるので。
雨にも強く、ケルヒャーとかでパーっと綺麗に出来るような、汚れが取れるような。そういうものを作れたら面白いかな〜っていうのはありますね。
—— 本記事に「家具の修理や改造もできます」なんて書いたら、本当にオーダーきちゃうかもしれませんけど!(笑)
十川:あはは。そうですね!家具の加工や修理は実際に受けてますよ。
十川:例えば、Yチェアのホゾが抜けたやつの修理。テーブルの天板を綺麗にして欲しい。木造ソファーの背もたれの角度を変えてほしいとか。いろいろなニーズが実生活にはあります。
他にも親御さんが大切に使っていたものを、子供にプレゼントしたいから、綺麗にリメイクして欲しいっていうリクエストもあります。
修理や加工ということでは、実に幅広く受けてますよ。
—— 木材の種類として、素材としてとりわけ好きなものはありますか?
十川:好きなものはやはり、無垢の木で、とりわけ好きな材料はマカバっていう。
—— マカバ。どこに自生しているのでしょうか?
十川:北海道か東北が多いですね。北海道民芸家具とか、そういうところで使っている。
—— アイヌ系の?
十川:いや、ああいう木彫りとかでなくて、家具です。
—— マカバはどうして好きなんですか?
十川:そうですね。木目が綺麗ってところですね。この斜めにギラギラ入っているのわかります?ギラギラしたのが、関西、愛知、名古屋の方も好きかもしれないですね。
虎っぽいというのは、虎斑杢(とらふもく)というのもあります。虎の縞々みたいな。それはナラの木なんですけど。
天然でこういう風に。オイルを塗るだけでも・・・またがっつり模様が出てきますね。
—— マカバが合う家具などはあるのでしょうか?
十川:タンスの口板、テーブル、あと椅子とかですね。
材料もマカバはしっかりしています。針葉樹はあんまり家具作りには向いていないですけど、広葉樹のカバ、持ってもらうと全然重みが違うんですよね。
ダークサイド
—— 続けてちょっとダークサイドな質問も聞いてよろしいでしょうか?(笑)
十川:あ、はい。(笑)
—— 修行時代も含め、これまでもっとも辛かったことや苦しかったこととかは?
十川:篠原さんのあの何をやってもダメで、上手くいかない時期のやつって下りですね?(笑)
—— お!前話も実はちゃんと読んでたんですね!(笑)
十川:読んでますよー。もちろんです。
ー辛かった時・・・? やはり篠原さんとも似たような感じでして、、、作り直しとかが重なってくるんですよね。
同じお客さんのやつだけがどうしても・・・こんなこと言っても大丈夫かわからないですけど。(笑)
—— 真心から愚痴まで、お話は幅広くお伺いしたいです(笑)
十川:全然愚痴ではないんですよ(笑)
ただ、どうしても作り直したやつを再度納めても、更なる直しになってしまう確率は上がります。
というのは、1つの部位に特化して、だんだんお客様の再チェックが厳しくなっていくんですよね。
—— なるほど。
十川:そうすると普通に十分な基準でも、意外とお客さんからすれば「前回持ってきたよりもちょっと色が薄いんじゃない?」とか、話をしても沼にはまってしまう。
木自体がそれぞれ色の吸い込みとかも違ったりするもので、自然の材料から全く同じには作れないというのもあるのです。
—— 自然界のものは2つと存在しないですからね、それは結局どうなったんですか?
十川:結局どうなったんだろう? 無事に作り直して納まりました。
はい。そこはプロなので合わさなきゃいけないという、根性もあるんで。
けど、配達に行く人を変えたりだとか(笑)
—— 配達する人を変えるって、なんかOKもらえそう(笑)
十川:っていうので納まったというのも確かあったような気がしましたね(笑)
—— すごいノウハウを聞いてしまいました。(笑)
一切のミスが許されない精密作業
—— 仕事の過程で難易度が高く、一切のミスが許されない作業はありますか?
十川:塗装は正直一番難しいですかね。そして神経を使います。
なぜなら塗装を一度失敗すると、作り直すなり、せっかく塗った塗装も剥がすところからやらなきゃいけないので。
その時の温度・湿度でも変わるので、一度でも安易に塗ってしまうと、塗装の結果が違うんです。温度で塗料の伸びが違ったりとかするので。
—— 気温の変化が激しい軽井沢では、とても神経を使うセンシティビティな作業ですね。
十川:そうですね。神経を使うので、午後にしようかな?とか、朝一はやめておこうかな?とか。環境的な気も使います。
—— 細かい神経を使って真心をこめたその先に、綺麗な完成作品が生まれるのですね。
十川:そうなんです。これ、会社勤めだと中々できないですよね。
—— あ、…。確かに。納品スケジュール最優先みたいに。
十川:「ちょっと今日朝は・・・。」って言っても、「朝からやれよ!」って話になってしまう。
—— 他には何かありますか、塗装以外に?難しいと言うか。
十川:木材には癖があるので、鉋(かんな)で仕上げるんですけど、逆目を止めるって言うんですかね。
逆剥けみたいになってるんじゃ、当然だめなんですよ。
—— 塗装、逆剥け、他には絶対にミスが許されない作業工程というのはございますか?
十川:木材の取り直しがきかない時ですね。
例えば1つの木きな板から家具制作する場合、同じ材料がないと部品の材料が足りなくなってしまう。計算のミスは絶対許されない。
—— 限られた材料で完成させる。
十川:そう。他にもお客様がお持ち込みされた修理依頼品も、代わりになる材料が無いので計算ミスは許されないですね。
習慣と自己管理
—— 普段、お仕事のパフォーマンスを最大限に高めるために、心掛けている習慣や自己管理していることは?
十川:はい。工房には必ず毎朝8時に入ってます。
そして、掃除。掃除をしながら、今日1日の段取りを考えてます。
ランダムな時間にはじめて、いきなり始めるとかは、ちょっとないですね。
準備体操ではないですけど、ウォーミングアップせずにいきなり工房で作業をやることもないですね。
—— 掃除をサボって、いきなり作業を始めちゃうと失敗しちゃうとか?
十川:そうですね。時間の使い方っていうのも、まだまだ改善していきます。
—— 今後ワークショップなどが開催される予定のようですが。これだけ素敵な工房だとお弟子さんの志願も来そうですね。
十川:弟子は取って無いですけど、基礎を学んでいる方であれば、お仕事できる仲間として考えていきたいと思ってます。
自然のエピソード
—— 実は、これまでリレーインタビュー掲載者様の全員に、「自然のエレメント x 軽井沢」と掛けて、エピソードを聞いているんです。ぜひお伺いさせてください。例えば木火土金水などのエレメントの中から何か。
土のエピソード
十川:軽井沢の土にはあさま石が多いですね。浅間山の噴火で飛んで来た石がゴロゴロしていますよ。
何も生えてなかったでしょ?軽井沢。昔の写真を見たことありますか?
—— いえ、写真はみたことがありませんが、何か軽井沢検定試験で出そうなお話ですね。
十川:昔は軽井沢まったく木が生えてなく、ほとんど植林したんですよ。旧道の土屋写真館にはそんな歴史の写真がいっぱいありますよ。
—— 土屋写真館さん。名前に「土」が入ってますね。
十川:土屋さん多いですからね、軽井沢。
—— え?そうなんですか!
十川:あとは、「土」。僕はいま工房の横に畑を準備してますね。木屑(きくず)落ち葉を、土に混ぜて来年に備えて畑を準備してます。
—— 工房から畑が見えて素敵ですね。種は何を?
十川:軽井沢はトウモロコシが非常に美味しいです。だから来年はトウモロコシをやろうと思います。
以前、軽井沢の町民菜園っていう場所を借りて、4シーズンやってましたよ。
その時にトウモロコシが本当に美味しかったなぁって。
金のエピソード
十川:職業柄、金属としてのエピソードは刃物になりますね。
製作工程で本当にたくさん刃物を、道具として金属を使用してます。
けど、製品になった時は極力金属を残さないことも考えてます。まだ製品には蝶番や釘が残っていますが。
けど、昔の金属がなかった時代も家具はあった訳で、それはもう木の組み合わせをホゾで留めていたりしてましたね。
価値観かと思いますけど、要は木と鉄では、木が負けてしまうんです。金属が木を壊してしまっているイメージがあるんです。
金属でも金箔であったり、装飾としての金属は美しい表現と思います。しかし、製品の構造としては、極力金属に頼らない手法も心掛けています。
木材だけでもできることはあります。
価値観として、木だけでも出来ることが、まだまだあるのではないかな?という思いはずっとありますね。
水のエピソード
十川:木材は水を吸って膨らんでいきます。
例えば木材の家具など傷つけてしまい凹んでいるところに、ガーゼに水を浸してつけておくと、木材が膨らんで凹みが戻ったりします。
木は成長の過程で水を通して膨らんでいくんですよね。
これ、木の中を水が通る穴ですよ。見えますか?
年輪は一年に一個しかできないので年輪は測ることができます。この木材は1cmの中に8年の月日が詰まっていて、70cmの丸太で、樹齢280年です。
あと、水は湿気で、90センチあれば3ミリは大きくなっちゃうんで、水分や湿気というのは、設計上の重要な要素です。
軽井沢の自然暮らし
—— 十川さんは高知県で生まれ現在は軽井沢に移住されましたが、これから軽井沢に移住を検討している方にメッセージはありますか?
十川:別荘族の人は違うんですけど、自然の暮らしを真剣に考えている方であれば、軽井沢を深く考えていると思いますよね。
軽井沢は夏場は人もたくさんいっぱいいるし、木も緑で良いんですけど。やはり冬の寒さを、冬の軽井沢を一度見に来た方がいいかもしれませんね。
移住して住む方だけですけどね、実際住む方は冬場も行った方がいいかもしれないですね。
次回ゲストのご紹介
―― 最後になりますが、十川さんが思う、軽井沢暮らしを支える方や、軽井沢で楽しく暮らす方々など、面白い方をリレーインタビューにお一人ご紹介をお願いできませんか?
十川:はい、僕からは絵本作家さんを紹介したいなと思います。
—— お名前を伺ってもよろしいでしょうか?
十川:accototo(アッコトト)さんですね。
—— 女性の方でしょうか?
十川:ご夫婦でやられてまして。
なかなか素敵なご夫婦で。
—— どのような繋がりでしょうか?
十川:子どものつながりで。娘さんが僕の長女と同じ学年で。保育園から同じだったのでもう長い付き合いです。
—— 軽井沢でご活躍されている方ですか?
十川:はい、そうですね。軽井沢で。
—— 絵本「うしろにいるのだあれ?」とかありますね。
十川:そうですね。あとポポくんシリーズっていうのが。
—— いまちょっとお電話していただいても?
十川:そうですね。もちろん喜んで(笑)
—— それでは、最後になりますが、インタビューをありがとうございました。TABLENOTE [テーブルノート]としても、十川さんのご活躍を今後とも追いかけていきたいと思います。
ありがとうございました!
十川:はい。こちらこそありがとうございました。また気軽に会いましょうね!
リレーインタビュー
第5話へ
十川渉さんのご紹介により、リレーインタビューのバトンは軽井沢の絵本作家さん、アッコトトさんへと繋がりストーリーは紡がれていきます。
家具製作の主体の本話から、次回はどんな展望のお話になるでしょうか?
次話もどうぞお楽しみにご期待・ご覧ください。
編集後記
十川渉氏とリレーのご縁で出会い、約1年間の時が過ぎました。
改めてソゴウワタル という人物について、誠に勝手ながら考えてみた。
いつも少年のような笑みを絶やさずも、細かな気遣い、繊細な空気を先読みしているような、そんな一方、大型の木材を大胆に整形して形作る力強さ、芯の太さに、大人らしい勇姿を垣間見えるような……
良い意味で人を驚かせ魅了し、作品作りへの執念を燃やし、工房独自の厳しい管理ルールを遵守する、極めて強固な基礎を守り続けている人でもある。
話しをする度に豊富な職人知識や経験を感じ、お客様の要望を理解し、応用性のプランも丁寧に提案し説明してくれる。納得する形まで一緒に考えて一緒に作り出してくれる。また十川さん独自の視点で展開される木材のお話など、家具の深みと一緒に生活の豊かさを増して、軽井沢という町の中、軽井沢らしい安心できるゆとりの暮らし、豊かな未来の理想や、生活のビジョンを想起から体感へと変えてくれる。
日々、朝早くから工房で重機や刃物、巨大家具に囲まれて何かを作っているかと思えば、驚くほどカワイイ小物まで造詣が深く、女性や子供の感性にも共鳴できる貴重な存在。
はじめて軽井沢へ移住するであろう方が必要とする家具への要望リクエストにも、スッと話を自分の中に落とし込み、いつも笑顔で楽しんで聞いてくれるその姿は、さすがmagocoro(真心)という屋号だけあり、その家具からはあたたかさが滲んで伝わってくる。
そんな十川氏が満を持して皆様にお届けしている、magocoro工房のオリジナル商品の数々はきっと、誰もが羨ましがる一点ものばかりなのだろう。
軽井沢現地で生まれるリアルなニーズを真心を込めて製作して生まれたそれはまさに、軽井沢の地産の証であり、”家具を超えた愛着の数々”が、大げさかもしれないが、軽井沢の輝ける未来、安心した癒しの生活を切り拓く、重要な鍵を握った工房になるという気がしてならない。
Photo & Text
堀田健志
magocoro 関連リンク
magocoro
〒389-0115
長野県北佐久郡軽井沢町大字追分1416-1
TEL : 090-2417-8219
FAX : 0267-46-6839
STAFF
企画・構成・編集・プロデューサー:堀田健志
インタビューア:齊木由美 (I-STAGE)
撮影:シンヤケイタ (ROLLUPst.), watanabe usk(ROLLUPst.), 堀田健志